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先日最終回を迎えた「拝啓、父上様」というドラマをみて、神楽坂を訪れてみたくなりました。
石畳の細い路地に黒壁、夕暮れにはほんのりともる料亭の灯り・・・
京都ならいかにもありそうな風景ですが、これが東京の都心にまだ残っているとは・・・
期待に胸をふくらませて、初めての神楽坂に出かけてみました。
ところが実際に訪れてみると、テレビカメラの絶妙な構図とアングルに、ただ驚くのみでした。
ドラマに描かれている神楽坂の独特の風景は、この街のほんの一部であり、
石畳の路地も黒壁も100mと続いていません。
路地の脇には電柱が無造作に立ち、空を見上げると無機質に光るタワーマンションが見えます。
平日にも関わらず、ドラマの影響からたくさんの人が、その切り取られた風景を探して歩き回り、
携帯電話やデジカメでその風景を切り取ろうとしているのですが、
その独特の風景のみをカメラに収めることに誰もが苦労しているようでした。
そんな神楽坂ですが、いかにも料亭街という風景は少ないものの、
古い木造住宅は少なくありません。
また細い路地や袋小路も少なくありません。
そして先日、その古さゆえの、また細い路地ゆえの悲劇がありました。
火事です。
その場所は、古い木造建物の立ち並ぶ路地で、しかも石畳の料亭街でした。
通称「かくれんぼ横丁」と呼ばれる、ドラマの世界の神楽坂を象徴するかのような一角です。
以前このブログでご紹介した原宿でも取り上げましたが、
「趣はあるものの災害に弱い街並み」ゆえの出来事でした。
私が訪れた時もまだその黒こげた焼け跡をさらしていた飲食店は、典型的な古い家屋です。
また隣接する建物と密着しており、これではいくら早期発見でも延焼は免れないのでは・・・
と思うほどで、お隣の料亭と思われる建物が一部焼けており、営業できないほどになっていました。
死者がでなかったことが不幸中の幸いですが、この独特の風景、残したい風景がかかえる
災害に対する弱さを世間に知らしめる事件となりました。
また、ここ数日能登半島でおきた地震が警告するように、
新耐震法以前の建物の地震に対する脆弱性は、火をみるより明らかです。
一方で、この耐震性のない建物こそが、独特の趣をかもし出し、人々を魅了しています。
この風景を残したいと思う反面、災害に弱い街を再生すべきことも否定できません。
何とか両立できないものでしょうか?
再開発すると、なぜどの街も似たりよったりの街並みになってしまうのでしょうか?
少なくとも神楽坂にタワーマンションは不釣合いです。
また無機質に光る建物にも違和感を覚えます。
災害に強く、しかも長い年月
ここではぐくまれた文化と歴史に思いを馳せることのできる再開発を期待したいものです。
道路がもう少し広くなっても、建物の外観が多少新しくなっても、
時折げたを履いた板前さんが坂を駆け下りる光景に神楽坂らしさを感じられるのではないでしょうか。
激戦を呈している東京都知事選、この古き良き東京の風景と、災害に強い街づくりの両立を
どなたか考えていただけないかと思う神楽坂の散歩でした。
今回は現在NHK朝の連続ドラマの舞台となっている川越をご紹介します。
川越は、埼玉県内に限った“住んでみたい街”のアンケートを行なえば、
おそらくトップ5には入ってくる街だと思います。
都心からはやや離れますが、埼玉県内では有数の商業地であり、
JRのほか、東武東上線や西武新宿線も乗り入れているうえ、
国道16号と254号が市の中心を通り、また関越自動車道の川越インターチェンジも
市街地の近くにあるなど、交通利便性にも優れています。
そして何といってもこの街の魅力は『小江戸』とも呼ばれる街並みがあることです。
JRと東武東上線が乗り入れる川越駅から北へ徒歩約10分、
西武新宿線のターミナル駅「本川越」がありますが、
『小江戸』の街並みへはそこからさらに北へ10分ほど歩きます。
商店が建ち並ぶ道を歩いていくと、一目でそれとわかる『蔵造り』の建物が現れます。400m以上も続く江戸情緒の漂う街並みはまるで時代劇のセットのようです。
思わず「おお~っ」と声をあげてしまい、次の瞬間にはカメラを構えていました。
夢中になって写真を撮り、ふと再び街並みに目をやると、
なんとも空が広く感じられ、通りも実にすっきりしています。
実はこの『蔵造り』が建ち並ぶ『一番街』は2年前に街並みを整備したとのこと。
そのため電柱や電線がなく、街灯も低くてスリムで建物に合った雰囲気、
しかも歩道はフラットな石張りです。
このリニューアル以来、若いカップルも多く訪れるようになったとか。
平日でも中高年を中心に人で溢れていると聞いていたので、
それに加えて若者も増えているとなるとゆっくり写真が撮れないかと思い、
上の写真は平日の朝、撮影した次第です。
しかし、リニューアルよりもこの街を引き立てている要因は、
実は周辺にマンション等の高い建物が無いことではないかと私は思います。
以前、やはりドラマの舞台となったことで気になり、訪れた神楽坂では、
細い路地の先にメタリックに光るタワーマンションがあり、とても興ざめしました。
そして電柱や電線、看板などが情緒溢れる風景の邪魔をします。
他の街でも並木道や趣ある街並みの撮影で、いつもそれらを避けるのに苦心します。
帰宅して都市計画図を確認してさらに驚きました。
『蔵造り』の建物一帯は建物の制限が最もゆるい商業地域ではありませんか!
最寄り駅から徒歩10分とはいえ、商業地域なのにマンションが建っていないとは、
驚きです。もちろん、全て調べたわけではないのですが、
少なくとも『蔵造り』の街並みの撮影を邪魔するマンションは見当たりません。
先日訪れた浦和とは大違いです。
確かに川越は一戸建ての住宅が多い街ではありますが、
駅周辺にはマンションも多く存在していますし、
また最近7年のマンション供給量の累計は埼玉県内ではトップ5に入るほどです。
にもかかわらずこの街並みとは、これこそ本当の“都市計画”なのだと思いました。
今後もこの街並みを大事に保存し、多くの観光客を魅了してほしいものです。
川越には『蔵造り』の街並みのほか、そのすぐ近くに『菓子屋横丁』が、
そしてこの川越が城下町として栄えたことの証である『川越城の本丸御殿』、
さらに『喜多院』など見所もたくさんあります。
まるで観光案内のような内容となってしまいましたが、
ぜひ一度『小江戸』めぐりをしてみてはいかがでしょうか?
このたび誠に勝手ながら夏休みをいただき、首都圏を飛び出し、
世界文化遺産の白川郷に行ってまいりました。
当日はあいにくの雨だったのですが、
雨にかすむ山々や街並みが独特の雰囲気をかもし出していて、
まるでおとぎ話の世界に迷い込んだような感じがしました。
そして期待の『合掌造り』は実に見事で、美しく、また驚きの連続でもありました。

まず、理屈抜きにその美しさには惚れ惚れします。
三角屋根の角度は、ほぼ60度といわれ、正三角形に近いとのこと。
さらに窓には一様に障子戸がはめられていて、アクセントになっています。
夜にはこの障子戸から灯りがもれ、美しい夜景を作りだします。
しかもこの『合掌造り』、外観を優先してこうなったわけではなく、
この地の風土に合った、実に合理的な造りなのです。
正三角形の屋根の角度は、豪雪地帯ゆえに屋根に積もる雪の重さに耐えられるため、
また屋根を支える梁には、雪の重みで根元が曲がって育った
丈夫な木材が使われています。(曲梁:下の写真)
屋根を支える柱は強風や地震の際、屋根にかかる力を分散させるため、
先端を駒の軸先のように細く削り、梁に乗せただけの構造。(駒尻)
障子窓は採光を高めるため。冬は周辺の雪の反射光まで採り入れ明るいそうです。
そして日中ははずして風を通します。

さらに白川郷を見渡せる荻町城址展望台から眺めると(上の写真)、
合掌造りの住宅が全てほぼ同じ方向を向いて建てられているのがわかります。
それは、この地域は川が南北に流れ、その川を伝って吹く強い北風を屋根に当てず、
かつ風通しをよくするため、建物の両脇に開いた障子窓を南北に向くように
建てられたからとのこと。
こうすると茅葺屋根は東西を向くことになり、毎日均等に屋根に日光があたり、
屋根の乾燥を助けるとのことです。
その上、風通しや日光を妨げないよう、家々の屋根の高さが少しずつ異なっています。
他にもさまざまな工夫がなされており、非常に驚かされました。
これぞまさに“機能美”!
江戸時代後期に建てられた住宅なのに、耐震性能を有し、
かつ優れた採光性と通風性、断熱性を併せ持つ高機能住宅。
しかもその姿は凛としていて、なんともいえない安定感を漂わせています。
現在のマンションと比較して唯一劣っているのは、耐火性能くらいでしょう。
雨にも関わらず、外国人も含めて多くの観光客が訪れていましたが、
環境に調和した住宅の良きお手本だと思いますので、
ぜひ火の元に注意して、永く保存され、人々に多くを伝えていって欲しいと願います。
Life & Home Solusion 代表 西澤 京子